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治療法

 他のがんと同様に、外科治療、化学療法、放射線療法が中心で、これらを組み合わせて行うのが一般的です。



外科療法

 胸膜肺全摘術(EPP)は胸膜中皮腫の根治療法となることが期待されています。患側の胸膜、肺、横隔膜、心膜を取り除くため侵襲が大きく、痛みや循環動態のコントロールが重要です。後遺症として、嗄声や広範囲の胸部痛みが残ることがあります。また、片肺になるので、ADLが大きく低下します。退院後の生活をどう立て直すかが課題です。
一方、完治は望めませんが、胸膜だけを取り除くのが胸膜切除術(PD)です。肺を残すことができるので、術後早期に回復が望めます。しかし、ミクロレベルの中皮腫細胞が残存することから完治は難しく、患者の症状緩和と延命を目的として行われます。
胸膜癒着術は、胸水が貯留しないよう、胸膜に薬剤による炎症を起こして癒着させる処置です。

化学療法

 これまで胸膜中皮腫患者の延命効果が実証された薬剤はありませんでしたが、近年アリムタ+シスプラチンが延命効果と症状改善効果のあることが認められました。しかしながら、延命効果は数カ月で、完治には至りません。アリムタ+シスプラチンを投与するときは、副作用を軽減のために事前にビタミンB12と葉酸を投与します。

放射線療法

 放射線のみで胸膜中皮腫を治癒させることはできませんが、疼痛の緩和や、外科療法や化学療法と併用して再発予防を目的に行われます。また、胸腔鏡挿入部位から中皮腫が広がらないように照射することがあります。

緩和療法

 症状が進行すると、胸痛、呼吸困難、全身倦怠感などの症状が出現します。また、外科治療後に痛みや息切れなどの後遺症が残ることがあります。緩和ケアチームは、このような不快な症状を解決するプロフェッショナルです。「自分は治療を諦めないので、緩和ケアは不要だ」といわれる患者さんもおられますが、必ずしも治療を諦めるから緩和療法を行うとは限りません。むしろ、辛い症状を克服することに時間を費やすのでなく、苦しい時間を元気な時間に変える手段として、取り入れることが可能です。
 中皮腫に対する緩和ケアは、他の悪性疾患へのケアと変わりはありません。ただし、中皮腫は、ひとたび症状が出現すると進行が速いので、常に患者がどの時期にいるか(病期)を正しくアセスメントして、症状出現に備えることが必要です。自覚症状(ないほうが良い)、病理検査結果による組織亜型(肉腫は上皮より進行が早い)、治療の効き具合、画像診断、血液検査結果(血小板、白血球上昇は増悪)などをもとに、多職種で検討しましょう。

その他の治療法

 完治法ではありませんが、患者さんの免疫を高め、症状を軽くするための鍼灸などがあります。